能と狂言のちがい

能は、面をつけた役者が、うたいと舞で歴史や伝説の物語を演じるまじめな劇で、観阿弥・世阿弥の親子が大成しました。狂言は、能の合間に演じられる、せりふ中心のこっけいな劇です。どちらも室町時代に猿楽から生まれ、あわせて能楽とよびます。
表でくらべる
| 能 | 狂言 | |
|---|---|---|
| 内容 | 歴史や伝説をうたいと舞で演じる(まじめ) | 庶民の生活をせりふでこっけいに演じる |
| 面 | 面をつける | ふつうは面をつけない |
| 大成した人 | 観阿弥・世阿弥 | 特定の人物なし |
| 上演 | 能の演目の間に狂言が演じられる |
見分けるときは、「まじめか、こっけいか」と「面をつけるか」を見ます。面をつけて、うたいと舞で静かに演じるのが能、面をつけずに、せりふで笑いをさそうのが狂言です。狂言は、能の演目と演目の間に演じられます。
能と狂言が生まれた流れ
猿楽から能・狂言へ
- 1猿楽や田楽という、庶民の芸能があった
- 2観阿弥・世阿弥の親子が、猿楽を、うたいと舞で物語を演じる能に高めた
- 33代将軍足利義満が観阿弥・世阿弥を保護し、能は武家の間にも広まった
- 4能の合間には、同じ猿楽から生まれたこっけいな劇、狂言が演じられた
猿楽は、もともと物まねや曲芸を中心とする庶民の芸能でした。観阿弥は田楽などのよさを取り入れ、歌と舞で物語を演じる能へと発展させました。京都で息子の世阿弥とともに演じた舞台を足利義満が見て感動し、以後は幕府の保護を受けました。
能
能は、面をつけた役者が、うたいと舞で物語を演じる日本の古典劇です。はやし(笛・鼓・太鼓)に合わせて静かに演じます。世阿弥は『高砂』『井筒』など多くの能の脚本をつくり、能の教えを『風姿花伝』にまとめました。「初心忘るべからず」は世阿弥の言葉です。
能は、足利義満のころの北山文化を代表する芸能です。北山文化は、公家の文化と武家の文化が合わさった華やかな文化で、金閣も同じ文化の代表です。
覚え方
能=観阿弥・世阿弥=義満の保護=北山文化(狂言とセット)
能を大成した観阿弥と世阿弥
観阿弥は大和(奈良県)の猿楽の一座の役者で、世阿弥の父です。世阿弥は少年時代に足利義満に認められ、幕府の保護のもとで能を発展させました。世阿弥は、幽玄とよばれる、静かで深みのある美しさを追い求めました。
世阿弥は、父から受けついだ能の教えを『風姿花伝(花伝書)』などの書物にまとめています。晩年は6代将軍の足利義教ににくまれ、佐渡に流されました。入試では「能を大成した人物」として、観阿弥・世阿弥の親子をセットで答えさせる問題がよく出ます。
狂言
狂言は、能と同じく猿楽から生まれた芸能で、能の演目の間に演じられます。当時の話し言葉のせりふを中心に、笑いをさそう内容を演じます。太郎冠者という家来がずるがしこく主人をだます話など、庶民のくらしや当時の世の中を生き生きとえがいています。大名や僧をからかう内容もあります。「附子(ぶす)」「柿山伏」などの演目がよく知られています。
狂言は当時の話し言葉で庶民の生活をえがくので、室町時代の人々の様子を知る手がかりにもなります。能と狂言はあわせて能楽といい、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。
覚え方
能=面をつけて静かに/狂言=せりふでこっけいに(能の合間)
ほかの時代の芸能と区別する
入試では、能・狂言を、江戸時代の芸能と取りちがえさせる問題も出ます。時代で分けておきましょう。
室町時代
- 北山文化能(観阿弥・世阿弥)と狂言
江戸時代
- 江戸時代の芸能歌舞伎・人形浄瑠璃
入試のポイント
- 大成した人=観阿弥・世阿弥、保護した将軍=足利義満、北山文化
- もとになった芸能=猿楽・田楽
- 能(まじめな歌舞劇)と狂言(こっけいなせりふ劇)の区別
- 歌舞伎・人形浄瑠璃(江戸時代)との区別
- 能の合間に演じられるこっけいなせりふ劇
- 当時の話し言葉で庶民の生活を描く→室町時代の人々の様子がわかる
- 能と狂言をあわせて能楽(無形文化遺産)
よくあるまちがい
能と狂言の内容を逆に覚える
能が「まじめな歌と舞の劇」、狂言が「こっけいなせりふの劇」です。「狂言」という字から、笑いをさそう劇のほうだと結びつけましょう。
能を保護した将軍を足利義政と答える
能を保護したのは3代将軍の足利義満で、北山文化です。8代将軍の足利義政は銀閣を建てた人で、東山文化です。
観阿弥と世阿弥の親子を逆に覚える
観阿弥が父、世阿弥が子です。『風姿花伝』を書いたのは、子の世阿弥です。
能を歌舞伎と同じ時代のものと考える
能と狂言は室町時代、歌舞伎と人形浄瑠璃は江戸時代の芸能です。
確認問題
答えを考えてから、問題をタップして答えと解説を確かめましょう。
Q1面をつけた役者が、うたいと舞で物語を演じる日本の古典劇です。庶民の芸能だった猿楽を、観阿弥・世阿弥の親子が足利義満の保護のもとで芸術に高めました。この説明にあてはまる古典劇を何といいますか。
能
能は、猿楽や田楽といった庶民の芸能から生まれました。
Q2能の合間に演じられる、せりふ中心のこっけいな劇です。当時の話し言葉で庶民の暮らしをおもしろく描き、大名や僧をからかう内容もあります。この説明にあてはまる劇を何といいますか。
狂言
狂言は能と同じく猿楽から生まれた芸能で、能の演目の間に演じられます。
Q3『○○(父)と世阿弥(子)で能を大成、保護者は足利義満』という特徴にあてはまる人物はだれでしょう。
観阿弥
大和(奈良県)の猿楽の役者で、世阿弥の父です。
Q4観阿弥の子で、父とともに能を大成した人物です。多くの能の脚本を書き、能の理論を『風姿花伝』にまとめました。この人物はだれでしょう。
世阿弥
世阿弥は観阿弥の子で、少年時代に3代将軍足利義満に認められ、幕府の保護のもとで能を発展させました。
つぎのステップ
年代と内容は、教科書・塾教材の記述にそろえた学習用のものです。異説がある年は、年表アプリの項目の中に記しています。まちがいを見つけたらお問い合わせから教えてください。